実家と一緒に相続した農地、売る前に知る許可と手続き
農地は、家や宅地と同じように自由に売買できるとは限りません。相続時の届出、農地として売る場合の許可、宅地や駐車場に変える場合の手続きなど、利用目的に応じた確認点を整理します。
📑 目次
ミナお客様から「相続した実家に農地が付いています。農地法(=農地を守るための法律)の第3条、第4条、第5条のどれから考えればいいですか」とご相談がありました。
タケさん結論から言うと、家と一緒に自由に売る話にはならない。まず、その土地を農地のまま使うのか、農地以外に使うのかを分けるんだ。
リク手順としては、相続の届出先と、おおむね10か月以内という目安を先に伝える段取りですか。
ミナ農地転用とはどういう意味ですか。
農地が付いてくる実家は、家だけの売却と同じには進みません
相続(=亡くなった人の財産を引き継ぐこと)した実家に農地が付いているときは、家の売却だけを先に決めると話が止まります。農地は、耕作の目的に使われている土地です。農地を農地のまま売ったり貸したりするのか、それとも農地以外に使うのかで、進む手続きが分かれます。
農地法には、農地を農地以外に変えることを規制し、農業での利用を確保する目的があります。そのため、農地を農地として売買・貸借する場合は、原則として農業委員会(=市町村に置かれ、農地の権利の手続きを扱う機関)へ申請し、許可を受けます。許可を受けずにした売買や貸借は無効とされます。
一方で、建物を建てる、駐車場にする、資材置場にするといった使い方は、農地転用(=農地を農地以外の使い方に変えること)に当たります。自分で使い方を変えるのか、土地を譲る相手が変えるのかで、扱う条文が変わります。
相続した直後は、売却先や価格の前に、農地の所在地と将来の使い方を整理してください。その整理ができれば、相談先で何を聞くべきかが見えてきます。
売れないと言われた物件でも、相談はできます。再建築不可・残置物あり・長年の放置もそのままでどうぞ。相談は無料です。
無料で相談してみる農地の使い方で分かれる手続き
| 土地の使い方 | 土地を持つ人が変わるか | 使う手続き |
|---|---|---|
| 農地のまま売買・貸借する | 変わる | 農地法第3条 |
| 自分で農地以外に使う | 変わらない | 農地法第4条 |
| 譲った相手が農地以外に使う | 変わる | 農地法第5条 |
第3条・第4条・第5条は、土地の使い方と譲渡の有無で分かれます
農地を農地のまま利用する目的で、所有権(=土地を持つ権利)を移したり、貸したりする場合は、農地法第3条の許可の対象です。許可の判断では、農地を効率よく利用して耕作することや、個人なら農作業に常時従事すること、周辺の農地利用に支障を出さないことなどが示されています。
農地法第4条は、土地を持つ人が自分で農地転用する場合に使います。たとえば、所有者が農地を農地以外の用途に変える場面です。第4条の申請者は、転用する人です。
農地法第5条は、転用目的で土地の権利を設定または移転する場合に使います。譲る人と譲り受ける人が連署して、転用の許可申請を行います。第4条は農地が対象ですが、第5条は採草放牧地(=主に牧草を取ったり、家畜を放したりする土地)も対象です。
タケさん農地転用は、農地を建物や駐車場、資材置場みたいな農地以外の使い方に変えることだ。自分で変えるなら第4条、譲った相手が変えるなら第5条になる。
ミナ農地のまま譲る話なのか、使い方を変えてから譲る話なのかを、最初に分けるのですね。
リク農地のまま売買する場合は、誰がどこへ申請するかまで案内しますか。
タケさん農業委員会に申請して許可を受ける流れだ。個別にどの手続きになるかは、土地の状態と使い方を見てみないと分からない。
相続したら、使い方を決める前にこの順で整理します
1. まず、農地の所在地を整理します。相続した農地は、所在地の市町村の農業委員会へ届出が必要です。農林水産省は、相続発生日からおおむね10か月以内の届出を案内しています。相続した農地で自ら農業を行うこと自体については、特に手続は必要ないと案内されています。
2. 次に、農地のまま使うのか、農地以外に使うのかを言葉にします。農地のまま売買・貸借するなら第3条です。自分で農地以外に使うなら第4条です。土地の権利を移して、譲り受けた人が農地以外に使うなら第5条です。
3. 農地転用を考える場合は、農地所在地の都道府県または市町村の農業委員会へ相談します。許可申請は、農地所在地の市町村の農業委員会を経由して、都道府県知事等へ提出します。土地の位置を示す地図や、登記事項証明書(=法務局で取れる、土地の登記内容を写した書類)などが添付書類として示されています。
4. 農用地区域(=農業用として計画的に使う土地の範囲)内の農地は、転用の前に計画変更が必要です。農用地区域から除外された後に、農地法上の転用許可を得る流れになります。使い方を決め打ちせず、所在地の窓口へ相談する順番が大切です。
相続後に進める順番
よくある失敗は、手続き前に使い方だけを変えてしまうことです
よくある失敗は、農地を駐車場や資材置場にする話を先に進め、許可や届出をしないまま使い始めることです。建築物の建設、駐車場、資材置場への利用は、農地転用に当たる例として示されています。家の売却を急ぐと、農地の扱いまで同じ感覚で進めてしまうため、この失敗が起きます。
許可または届出をせずに農地転用を行うと、違反転用となります。工事などの停止を求める勧告や、元の状態に戻す命令などの行政処分の対象となり得ます。悪質な違反転用は、罰則の対象となり得ます。詳細は当該法令を確認してください。
金額の話だけを先にすると、引き取り費用を売主が負担する形では、0円より下になることがあります。だからこそ、価格の前に、農地のまま扱うのか、農地以外に使うのかを整理することが先です。
✅ 農地が付く実家を相談する前の確認項目
- 相続した農地の所在地を市町村名まで説明できるか
- 相続発生日からおおむね10か月以内か
- 農地のまま売買又は貸借する予定か
- 建物や駐車場として自分で使う予定か
- 権利を移して農地以外に使う予定か
- 農業委員会へ相談する内容を整理できたか
家の売却と農地の手続きを、同じ順番で考えないことです
まとめると、農地が付いてくる実家は、農地の使い方で進む手続きが分かれます。農地のまま売買・貸借するなら第3条です。自分で農地以外に使うなら第4条です。権利を移して農地以外に使うなら第5条です。
相続した農地は、所在地の市町村の農業委員会への届出から着手します。そのうえで、土地の所在地と使い方を整理し、農地転用を考える場合は都道府県または市町村の農業委員会へ相談してください。ご不明な点は、無料相談で個別にお答えしています。お気軽にご相談ください。
出典: e-Gov法令検索 / 官公庁(maff.go.jp) / 官公庁(map.maff.go.jp)
この記事で参照した法令(e-Gov法令検索): 農地法 / 農業委員会へ農地法 / 都道府県知事等へ農地法 / 経由して農地法
この記事を書いた人
小野海士宅地建物取引士株式会社オッティモ 代表取締役
不動産実務15年。東京都荒川区を拠点に、相続・空き家・訳あり物件の買取や売却のご相談を全国対応で手がける。「他社に断られた物件」の相談を数多く受けてきた経験から、難しい不動産の手放し方を分かりやすく解説している。不動産業者向け業務SaaS「anken.」の開発者でもある。
公開日 最終更新
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