相続した実家の境界が曖昧なとき、売却前に確認したいこと
境界と筆界、所有権の範囲は同じとは限りません。資料調査や測量、隣地所有者との立会いの進め方、相続人が申請できる筆界特定制度と費用負担の基本を整理します。
📑 目次
ミナお客様から「相続した実家の境界が分からないまま、売却の話を進めてよいですか」とご相談がありました。
タケさん結論から言うと、まず筆界、つまり登記された土地どうしの境を分けて見よう。売却の話を急ぐ前に、何が分からないのかを整理するんだ。
ミナ筆界とはどういう意味ですか。
タケさん土地が登記されたときに、その土地の範囲を区切るために定められた線のことだよ。現地の境界標、つまり境目を示す目印が見つからないときも、筆界と所有権の範囲は同じ意味とは限らない。
リク手順としては、まず土地家屋調査士に相談する人を決めて、資料と現地を見てもらう流れでよいですか。
境界が分からないとき、先に分けるべき二つの話
相続した実家の境界が分からないときは、筆界と所有権の範囲を混ぜないことが出発点です。筆界は、登記された土地どうしの境です。一方、所有権の範囲は、その土地を持つ権利がどこまで及ぶかという話です。一般に「境界」という言葉は、この二つの意味で使われます。
筆界と所有権の範囲を区切る線は一致することが多い一方で、一致しないこともあります。そのため、現地で見える塀や目印だけを見て、土地を持つ範囲まで決めつけないことが大切です。筆界は、所有者どうしの合意で変えることもできません。
売却を考える場面では、まず現地のどの部分が不明なのかを言葉にします。境界標が見当たらないのか、塀の位置と土地の線が同じか分からないのかで、相談時に伝える内容が変わります。
売れないと言われた物件でも、相談はできます。再建築不可・残置物あり・長年の放置もそのままでどうぞ。相談は無料です。
無料で相談してみる筆界と所有権の範囲を混同しない早見表
| 言葉 | 何を指すか | 所有権の範囲を示すか |
|---|---|---|
| 筆界 | 登記時に定められた土地の境です | いいえ |
| 所有権の範囲 | 土地を持つ権利が及ぶ範囲です | はい |
| 筆界特定 | 現地での筆界の位置を特定する手続です | いいえ |
売却の相談前に進める4つの手順
1. まず、相続した実家の所在地と、境目が分からない場所を整理します。現地で境界標が見当たらない場所や、塀などの工作物がある場所を伝えられるようにします。境界標は、土地の境目を示す目印です。
2. 土地家屋調査士に相談します。土地家屋調査士は、土地の表示に関する登記や、土地の筆界を明らかにする仕事の専門家です。当社は、土地家屋調査士を連携先として紹介するまでです。
3. 土地家屋調査士が、資料調査と現地の測量を進めます。測量は、土地の広さや形を測ることです。作業例には、法務局や市区町村役場などでの資料調査、現地の測量、隣接地所有者や公共物の管理者との境界立会があります。境界立会は、関係者が現地で境目を確認することです。
4. 筆界特定を使うかを検討します。筆界特定は、土地と隣接地の筆界について、現地での位置を特定する手続です。相続人、つまり亡くなった人の財産を引き継ぐ人も申請できます。不動産登記法第123条第5号と第131条では、相続人を含む所有権登記名義人等が申請できると定めています。
申請先は、対象土地の所在地を管轄する法務局または地方法務局です。申請では、何を求める申請なのか、申請する人の氏名または名称と住所を明らかにします。相続人が申請する際には、相続があったことを示す公務員作成情報などの提供も求められます。
筆界特定は、土地の所有権がどこまであるかを特定する制度ではありません。筆界特定登記官が、登記記録や地図、図面、土地の形、工作物、囲障、境界標などを総合して判断します。所有権の範囲を決める手続と誤解しないことが重要です。
境界が分からない相続した実家で進める流れ
費用の話と、よくある取り違え
よくある失敗は、筆界特定をすれば所有権の範囲まで決まると考えることです。この取り違えは、「境界」という言葉が筆界と所有権の範囲の両方を指して使われるために起きます。筆界特定は新しく境目を決めるものではなく、登記された際に定められた元来の筆界を明らかにする手続です。
境界標の設置と保存の費用は、民法第224条により隣り合う土地の所有者が等しい割合で負担します。測量費用は、土地の広さに応じて分担します。これは、境界標や測量に関する費用の考え方です。
筆界特定の手続費用は別に整理します。原則として申請人が負担し、双方の土地の所有者が申請人となる場合は、等しい割合で負担します。申請人には、手続費用の概算額の予納もあります。
売却方法の話では、0円より下、つまり売主が費用を負担して引き取ってもらう売却方法になることもあります。境界の整理にかかる費用と、売却の条件は、同じ言葉でまとめずに分けて相談します。
ミナ筆界特定は、所有権の範囲を決める手続ではないのですね。
タケさんそう。そこを混ぜると、何を相談したいのかがずれる。土地家屋調査士に、現地の境目が分からない場所をそのまま伝えよう。
リク相談前には、所在地、不明な場所、相続人であることを示す情報を整理しておくと進めやすいですね。
タケさんその順でいい。筆界特定を申請するなら、申請の趣旨と申請する人の情報も明らかにする必要がある。
✅ 土地家屋調査士への相談前にそろえる確認項目
- 相続した実家の所在地を伝えられるか
- 境目が分からない場所を説明できるか
- 現地に境界標が見当たらない場所があるか
- 塀などの工作物がある場所を伝えられるか
- 相続人であることを示す情報があるか
- 隣接地所有者との境界立会を検討できるか
まとめ:売却の前に、分からない境目を言葉にする
相続した実家の境界が分からないときは、筆界と所有権の範囲を同じものとして扱わないことが大切です。筆界は登記された土地の境であり、所有権の範囲を特定するものではありません。
現地の状況を整理したら、土地家屋調査士に資料調査、測量、境界立会について相談します。筆界特定を検討する場合も、相続人は申請できます。費用については、境界標と測量、筆界特定の手続を分けて考えます。ご不明な点は、無料相談で個別にお答えしています。お気軽にご相談ください。
この記事で参照した法令(e-Gov法令検索): 不動産登記法
この記事を書いた人
小野海士宅地建物取引士株式会社オッティモ 代表取締役
不動産実務15年。東京都荒川区を拠点に、相続・空き家・訳あり物件の買取や売却のご相談を全国対応で手がける。「他社に断られた物件」の相談を数多く受けてきた経験から、難しい不動産の手放し方を分かりやすく解説している。不動産業者向け業務SaaS「anken.」の開発者でもある。
公開日 最終更新
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