首都圏等整備法とは?「10年転売制限」造成工場敷地のルールを解説|重説シリーズ⑮
首都圏等整備法の「10年転売制限」と造成工場敷地のルールを徹底解説。首都圏・近畿圏・中部圏における工場敷地の譲受人に課される転売制限の仕組み、重要事項説明のポイントを図解します。
📑 目次
首都圏等整備法とは?「10年転売制限」造成工場敷地のルールを解説|重説シリーズ⑮
❓ 「首都圏」って具体的にどこからどこまで?
❓ 「工業団地造成事業」って何?住宅地と関係ある?
❓ 土地を買っても10年間売れないって本当?
通称「首都圏等整備法」は、その名の通り、**首都圏(東京都+周辺7県)**に限定して適用される法律です。過密化する都市部の秩序ある発展を目指し、郊外に工業団地や住宅都市を計画的に配置するために作られました。不動産取引では、この法律に基づいて造成された**「造成工場敷地」**に課される、強力な**「10年間の転売制限」**が最重要ポイントとなります。
🏭 法律の目的と役割:首都圏の「工業団地」を整備する
この法律の正式名称は「首都圏の近郊整備地帯及び都市開発区域の整備に関する法律」です。1958年(昭和33年)に制定されました。
この法律の目的は、日本の中心である「首都圏」が過密化し、無秩序に拡大(スプロール化)するのを防ぐことです。そのために、首都圏を以下の3つのエリアに分けて管理しています。
- 既成市街地: いわゆる都心部。機能の過密を抑制するエリア。
- 近郊整備地帯: 既成市街地の周辺。無秩序な市街地化を防ぎつつ、計画的に整備するエリア。
- 都市開発区域: さらにその外側。工業団地や居住都市として積極的に開発・誘導するエリア。
この法律が重説に関わるのは、主に「近郊整備地帯」や「都市開発区域」において、**「工業団地造成事業」**という都市計画事業が行われた土地です。
(図解:「首都圏等整備法」のエリア区分と事業)
首都圏等整備法のポイント
- 首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県)が対象です。
- 都市の無秩序な拡大を防ぎ、工業団地や住宅都市を計画的に配置します。
- 重説では、この法律に基づき造成された**「造成工場敷地」**の制限が対象となります。
🏭 重説の最重要ポイント「造成工場敷地の譲渡制限」(法第25条)
不動産取引において、この法律で最も重要になるのが**第25条1項**に定められた「譲渡制限」です。これは、第12回・第13回の法律で見た「転売禁止」ルールと非常によく似ています。
1. 対象となる土地は?
対象となるのは、この法律に基づいて施行された**「工業団地造成事業」**によって作られた**「造成工場敷地」**です。つまり、工場や事業所を建てるために造成された工業団地の土地のことです。
2. どんな制限がかかる?
この「造成工場敷地」を購入した人(譲受人)は、投機的な転売(=土地ころがし)を防ぐため、一定期間、その土地の権利を自由に処分できなくなります。
具体的には、**「工事完了の公告があった日の翌日から起算して10年間」**は、**都道府県知事(または国土交通大臣)の「承認」**がなければ、以下の行為ができません。
🚫 10年間制限される行為(法25条)
- 所有権の移転(=**売買、贈与**)
- 地上権、賃借権などの設定・移転(=**土地を貸す**こと)
※これは、工場を建てるという本来の目的のために土地が利用されるよう縛りをかけるルールです。
(図解:「造成工場敷地」の10年制限タイムライン)
⚖️ 類似法(第12回・第13回)との違い
「10年転売制限」というルールは、第12回・第13回の法律にも出てきました。ここで3つの法律の違いを整理します。
| 法律(重説シリーズ) | 新住宅市街地開発法 (第12回) |
新都市基盤整備法 (第13回) |
首都圏等整備法 (今回:第15回) |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 住宅地の供給 | 都市基盤(インフラ)と宅地 | 工業団地の整備 |
| 開発手法 | 買収方式 | 土地区画整理(換地)方式 | (主に)買収方式 |
| 適用エリア | 全国 | 全国 | 首都圏のみ |
| 建築義務 | 5年以内 | 2年以内 | (特になし) |
| 転売制限 | 10年間(要 承認) | 10年間(要 承認) | 10年間(要 承認) |
✅ 重要事項説明での扱いとチェックポイント
取引する土地が「首都圏等整備法」の「工業団地造成事業」で造成された土地である場合、宅地建物取引業者はその内容を重要事項説明(重説)で買主に説明する義務があります。
1. 重説で説明される項目
重説では、主に以下の点が説明されます。
- 法律名: 首都圏の近郊整備地帯及び都市開発区域の整備に関する法律 第25条1項
- 制限の概要:
- 「工業団地造成事業」で造成された**「造成工場敷地」**である旨。
- 工事完了の公告から**10年間**、土地や建物の権利を移転(売買・賃貸など)するには**知事等の承認**が必要であること。
2. 買主・仲介業者のチェックポイント
新人営業マンや買主様は、特に以下の点に注意して確認しましょう。
首都圏等整備法 取引チェックポイント
- ① エリアの確認:
まず、取引物件が「首都圏」(東京+7県)にあることが大前提です。 - ② 事業の確認:
その土地が「工業団地造成事業」で造成された土地かどうかを、行政の担当課(都市計画課、企業誘致課など)で確認します。(※住宅地がこの制限を受けることはまずありません) - ③ 制限期間(10年)が経過しているか?
もし該当する土地だった場合、いつ「工事完了の公告」があったかを調べ、10年の制限期間が既に満了しているかを確認します。期間内であれば、知事の「承認」が取引の絶対条件となります。
❓ FAQ(よくある質問と回答)
Q1: この法律は、普通の住宅地(一戸建てやマンション)の取引に関係ありますか?
A1: ほとんど関係ありません。重説の対象となる第25条の「10年転売制限」は、あくまで「造成工場敷地」という事業用の土地に対する制限だからです。ただし、この法律が定める「都市開発区域」内で、別途「新住宅市街地開発事業(第12回)」などが行われることはあります。
Q2: 10年以内に、どうしても工場を売却したくなったらどうなりますか?
A2: 都道府県知事(または国土交通大臣)に「承認」の申請を行います。この法律は投機的な転売を防ぐのが目的なので、経営上の理由(業績不振や事業再編など)によるやむを得ない売却であれば、承認が得られる可能性はあります。
Q3: 知事の承認なしに売買契約を結んでしまいました。
A3: その売買契約は**「無効」**です。買主は所有権を取得できません。これは第12回・第13回の法律と同様、非常に強力な制限です。仲介した不動産会社は、重大な重説義務違反に問われます。
Q4: 「近畿圏(大阪エリア)」にも同じような法律はありますか?
A4: はい、あります。それが次回(第16回)で解説する「近畿圏の近郊整備区域及び都市開発区域の整備及び開発に関する法律(近畿圏等整備法)」です。内容は首都圏等整備法とほぼ同じです。
まとめ
「首都圏等整備法」は、首都圏の秩序ある発展のため、郊外に工業団地などを計画的に配置する法律です。
🔑 首都圏等整備法における重要ポイント
- 首都圏(東京+7県)のみに適用される。
- 重説の対象は**「工業団地造成事業」**で造られた**「造成工場敷地」**。
- 工事完了から**10年間**は、売買・賃貸などに知事等の「承認」が必要(法第25条)。
- 主に事業用不動産の取引で問題となり、住宅地で適用されるケースは稀。
売買・仲介に携わる宅地建物取引業者は、首都圏で大規模な工業団地内の土地を取引する際、この10年制限の期間が満了しているかを必ず確認する必要があります。
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❓ よくある質問(FAQ)
空き家を売却する際に必要な書類は何ですか?
空き家を売却する際には、以下の書類が必要です:
- 登記済権利証または登記識別情報
- 固定資産税納税通知書
- 建物の図面や測量図
- 身分証明書
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