省エネ基準への適合義務とは?建築物省エネ法第10条をやさしく解説
新しく建てる建物は原則として省エネ基準への適合が必要です。根拠は建築物省エネ法第10条で、条文に面積のしきい値はなく、除外は10㎡以下だけ。「300㎡以上が対象」は過去の基準です。適合性判定や違反時の扱いまで条文で整理しました。
📑 目次
この記事で分かること
省エネ基準への適合義務は建築物省エネ法第10条であること、面積のしきい値は条文になく除外は10㎡以下だけであること、「300㎡以上が対象」は過去の基準であることを、条文にあたって解説します。
これから家を建てる方、建て替えを考えている方に関わる法律です。
現行法では、新しく建てる建物は原則として省エネ基準を満たさなければなりません。断熱材や窓、設備の性能が基準に届かないと、建築確認が下りません。つまり、基準を満たさない家は建てられません。
「大きな建物だけの話でしょう」と思われがちですが、そうではありません。この記事では、誰が・何を・どこまで求められるのかを条文にあたって整理します。
適合義務の条文は第10条です
建築主は、建築物の建築(エネルギー消費性能に及ぼす影響が少ないものとして政令で定める規模以下のものを除く。)をしようとするときは、当該建築物(増築又は改築をする場合にあっては、当該増築又は改築をする建築物の部分)を建築物エネルギー消費性能基準に適合させなければならない。
2 前項の規定は、建築基準法第六条第一項に規定する建築基準関係規定とみなす。
読み取れることは3つです。
- 対象は「建築物の建築」——面積のしきい値は条文にありません
- 除外は「政令で定める規模以下のもの」だけ
- 第2項により建築基準関係規定とみなされる=適合しなければ建築確認が下りない
第2項が実務上いちばん効きます。省エネ基準は「努力目標」ではなく、建築確認の通る・通らないを決める要件です。
除外されるのは10㎡以下だけです
法第十条第一項の政令で定める規模は、建築物の建築に係る部分の床面積(内部に間仕切壁又は戸…を有しない階又はその一部であって常時外気に開放された開口部を有するもののうち、当該開口部の面積の合計の割合が当該階又はその一部の床面積の二十分の一以上であるものの床面積を除く。)の合計が十平方メートルであることとする。
除外は10㎡以下です。物置や小さな増築などが該当します。
住宅の新築は、面積にかかわらず対象です。「小さい家なら関係ない」ということはありません。
よくある誤解:「300㎡以上が対象」ではありません
「300㎡以上の建築物が対象」という説明を見かけることがありますが、これは過去の基準です。
現行法の条文に、適合義務の面積要件はありません。施行令にも「三百平方メートル」「二千平方メートル」という語は一度も出てきません(同施行令は全8条)。
法律の本文で「三百平方メートル」が出てくるのは第38条(登録基準等)の1箇所だけで、これは適合性判定を行う機関の登録要件——判定員が何人必要かを決める区分——であり、適合義務の対象範囲とは無関係です。
「省エネ基準」の中身はどこで決まるのか
建築物エネルギー消費性能基準 建築物の備えるべきエネルギー消費性能の確保のために必要な建築物の構造及び設備に関する経済産業省令・国土交通省令で定める基準をいう。
基準は大きく分けて、外皮(断熱)の性能と、設備を含めた一次エネルギー消費量の2つで評価されます。具体的な数値は地域区分や用途によって変わるため、設計者に「この計画は基準を満たしていますか」と確認するのが確実です。
確認の手続き:適合性判定
一定の建築行為では、建築確認とは別に適合性判定という手続きが入ります。
建築主は、前条第一項の規定により建築物エネルギー消費性能基準に適合させなければならない建築物の建築…をしようとするときは、その工事に着手する前に、建築物エネルギー消費性能確保計画…(略)
工事の着手前である点が重要です。設計が固まってから慌てると、手戻りが大きくなります。費用と期間が余分にかかるため、計画の早い段階で設計者と相談してください。
基準を満たさないとどうなるか
建築確認が下りないため、そもそも着工できません。仮に違反していた場合は、次の条文が働きます。
所管行政庁は、第十条第一項の規定に違反している事実があると認めるときは、建築主に対し、相当の期限を定めて、当該違反を是正するために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
命令の相手は建築主です。工事を頼んだ側が是正を求められます。
建築士からの説明制度(重要事項説明宅建業者が契約前に、物件や取引条件の重要な事項を宅地建物取引士が書面で説明すること。買主・借主が不利益を受けないための手続きです。とは別です)
同じ法律に、建築士が建築主へ説明する制度があります。ただし、宅地建物取引業者が行う重要事項説明とはまったく別の制度です。混同されやすいので分けて書きます。
建築士は、建築物再生可能エネルギー利用促進区域内において、計画作成市町村の条例で定める用途に供する建築物の建築で当該条例で定める規模以上のものに係る設計を行うときは、当該設計の委託をした建築主に対し、…書面を交付して説明しなければならない。
- 説明するのは建築士、相手は建築主(=工事を頼む人)
- 対象は市町村が定めた促進区域内で、条例で定める用途・規模のものに限られます
- 内容は再生可能エネルギー利用設備について
不動産を買うときの重要事項説明とは、担い手も場面も内容も違います。なお建築物省エネ法は、宅建業法第35条宅地建物取引業法で、契約の前に買主・借主へ重要事項を書面で説明する義務を定めた条文。重要事項説明書(重説)の根拠となる規定です。を受けた政令にも省令にも含まれていません。
建てる前・買う前に確認したいこと
- これから建てる方:設計の早い段階で「省エネ基準に適合しているか」「適合性判定は必要か」を設計者に確認してください。基準を満たす仕様は建築費に影響しますが、そのぶん冷暖房にかかる費用は下がります
- 建売・新築分譲を買う方:省エネ性能がどう評価されているかを売主に確認してください。性能は中古で売るときの評価にもつながります
- 既存の建物を買う方:適合義務は新築・増改築が対象です。既存建物をそのまま使う分には直ちに適用されませんが、大きく増改築する場合は対象になります
ご注意:本記事は一般的な解説です。個別の計画については、設計者・所管行政庁および専門家にご確認ください。
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この記事で参照した法令(e-Gov法令検索): 建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律 / 同法施行令
この記事を書いた人
小野海士宅地建物取引士株式会社オッティモ 代表取締役
不動産実務15年。東京都荒川区を拠点に、相続・空き家・訳あり物件の買取や売却のご相談を全国対応で手がける。「他社に断られた物件」の相談を数多く受けてきた経験から、難しい不動産の手放し方を分かりやすく解説している。不動産業者向け業務SaaS「anken.」の開発者でもある。
公開日 最終更新
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