買主の住宅ローンが通らないとき、売主が確認したい特約と期限
住宅ローン特約は、買主の融資が成立しない場合の契約の扱いを定める条項です。解除できる条件や期限、手付金などの返還は契約内容で異なるため、売主が確認したい書面の項目と注意点を整理します。
📑 目次
ミナお客様から「買主の住宅ローンが通らなかったら、売った話は必ずなくなるのですか」とご相談がありました。住宅ローン特約とは、どういう意味ですか。
タケさん結論から言うと、必ず白紙解除になるとは言えない。契約書にある住宅ローン特約の書き方を読むことが先だよ。
リク手順としては、売買契約書で期限、対象の金融機関、借入額、借入が成立しないときの措置を確認する形ですね。
タケさんそう。重要事項説明書宅建業者が契約前に、物件や取引条件の重要な事項を宅地建物取引士が書面で説明すること。買主・借主が不利益を受けないための手続きです。の第35条第1項第12号に関わる説明も見て、契約書と一緒に読むんだ。
住宅ローンが通らなかったとき、まず契約書を読む理由
結論から言うと、買主の住宅ローンが通らなかったときに売買契約をどう扱うかは、住宅ローン特約の文言で確かめます。住宅ローン特約とは、売買代金のために借りるお金が成立しないときの扱いを決める、契約上の約束です。融資が通らなければ必ず白紙解除になる、とは決めつけられません。
売却を待つ場面では、買主から借入が成立しなかったと聞いた時点で不安が大きくなります。引渡しの予定や代金の受取りにも関わるためです。そこで、感覚で「契約は終わった」と判断せず、売買契約書(=売買の約束を書いた書類)にある住宅ローン特約を読みます。期限を過ぎたときの扱いも、同じ書類で見ます。
重要事項説明書(=契約前に大切な条件を説明する書類)では、金銭の貸借のあっせん(=代金のためにお金を借りる内容)と、借入が成立しないときの措置が説明されます。宅地建物取引業法第35条宅地建物取引業法で、契約の前に買主・借主へ重要事項を書面で説明する義務を定めた条文。重要事項説明書(重説)の根拠となる規定です。第1項第12号は、この内容を重要事項に挙げています。説明は契約が成立するまでの間に行われます。
契約が成立した後は、宅地建物取引業法第37条の書面(=契約後に交付される書類)にも目を通します。契約の解除に関する定めや、借入が成立しないときの措置に定めがあれば、その内容は書面に記載されます。売主として見るべきなのは、住宅ローン特約があるかどうかだけではありません。期限、対象の金融機関、借入額、借入不成立時の措置までを一続きで読むことです。
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無料で相談してみる重要事項説明書で目にする借入条件の欄
| 書類で見る項目 | 国土交通省の様式例の欄 | 読むときの焦点 |
|---|---|---|
| 金融機関 | 融資取扱金融機関 | どこから借りる内容か |
| 借入額 | 融資額 | いくら借りる内容か |
| 借入期間 | 融資期間 | どの期間で返す内容か |
| 返済の条件 | 利率・返済方法 | 返済条件の内容 |
| 費用の欄 | 保証料・ローン事務手数料 | 借入に伴う費用の内容 |
期限・金融機関・借入額は、一律では決まりません
住宅ローン特約の期限、対象となる金融機関、借入額は、売買契約で決まります。宅地建物取引業法第35条第1項第12号には、住宅ローン特約の期限として一律の日数や日付は書かれていません。契約書に書かれた期限を、その契約の期限として読みます。
国土交通省の重要事項説明書の様式例には、融資取扱金融機関、融資額、融資期間、利率、返済方法などの記載欄があります。また、借入が成立しないときの措置の記載欄もあります。金銭の貸借のあっせんと、契約の解除に関する事項は、様式例では別の項目に置かれています。
このため、金融機関の名前だけを見て判断するのでは足りません。借入が成立しないときに何をする約束か、契約の解除についてどのような定めがあるかも読みます。売却を進める側は、買主の借入状況そのものを推測するより、書面にある約束を先にそろえて読むほうが判断しやすくなります。
住宅ローンが通らなかったと聞いたときの確認順
ミナお客様から「期限の日を過ぎたら、その場で契約がなくなるのでしょうか」とご相談がありました。
タケさんそこは見てみないと分からない。期限を過ぎた場合の扱いまで、契約書の文言で読む必要がある。
リク解除とは、契約を終わらせることですね。誰がいつ意思を伝えるかも、書かれた内容で見るのですか。
タケさんそう。解除権(=契約を終わらせることができる権利)があるなら、民法第540条では相手方への意思表示で解除する仕組みになっている。
よくある失敗は「必ず白紙解除」と思い込むことです
よくある失敗は、住宅ローンが通らなかったと聞いて、「必ず白紙解除になる」と先に決めてしまうことです。白紙解除とは、契約が初めからなかった形に戻る扱いを指して使われる言葉です。しかし、今回確認した法令と国土交通省の様式例からは、融資不成立のすべてで一律に白紙解除になるとは読み取れません。
この思い込みが起きる理由は、住宅ローン特約という名前だけで、解除の効果まで同じだと受け取りやすいためです。実際には、期限、対象の金融機関、借入額、借入が成立しないときの措置を契約で見ます。期限を過ぎた後に契約がどうなるかも、契約書の文言なしには判断できません。
宅地建物取引業法第37条第1項第7号では、契約の解除に関する定めがあるときは、その内容を記載します。同項第9号では、代金についての金銭の貸借のあっせんに定めがある場合、借入が成立しないときの措置を記載します。解除の定めと借入不成立時の措置は、どちらか一方だけで済ませず、両方を読みます。
期限は日付だけでなく、契約上の扱いまで読みます
期限を見るときは、日付だけを書き抜くのでは足りません。その期限が何の期限か、期限までに借入が成立しなかったときの措置は何か、期限経過後をどう扱うかを続けて読みます。住宅ローン特約の期限について、法律に一律の日数は定められていません。
期間を日・週・月・年で決める場合、民法には期間の数え方の定めがあります。原則として初日は数えず、期間は末日の終了で満了します。ただし、法律行為に別の定めがある場合は、その定めが優先されます。売買契約書に期限の書き方があれば、まずその記載を読むことになります。
解除権を行使したときは、民法第545条第1項により、各当事者は相手方を原状に復させる義務を負います。ただし、実際の売買でどのような扱いになるかは、住宅ローン特約と解除に関する条項の文言を離れて判断できません。売主は、買主からの連絡だけで結論を出さず、書面の該当箇所を確認します。
✅ 住宅ローンが通らなかったと聞いた日に見る項目
- 売買契約書に住宅ローン特約の記載があるか
- 住宅ローン特約の期限が書かれているか
- 対象となる金融機関が書かれているか
- 借入額が書かれているか
- 借入が成立しないときの措置が書かれているか
- 期限を過ぎたときの扱いが書かれているか
- 契約の解除に関する定めが書かれているか
まとめ:住宅ローン特約は書面の言葉で判断します
まとめると、住宅ローンが通らなかったときは、必ず白紙解除になると決めつけません。売買契約書で、住宅ローン特約の期限、対象の金融機関、借入額、借入が成立しないときの措置を読みます。さらに、期限を過ぎた場合の扱いと、契約の解除に関する定めも確認します。
重要事項説明書では、借入に関する内容と、借入が成立しないときの措置が説明されます。契約成立後の書面では、解除に関する定めや借入不成立時の措置が記載されます。書類を並べて読むことで、売却がどう進むのかを落ち着いて判断しやすくなります。ご不明な点は、無料相談で個別にお答えしています。お気軽にご相談ください。
この記事で参照した法令(e-Gov法令検索): 宅地建物取引業法
この記事を書いた人
小野海士宅地建物取引士株式会社オッティモ 代表取締役
不動産実務15年。東京都荒川区を拠点に、相続・空き家・訳あり物件の買取(日本全国)や売却(関東・大阪・名古屋・福岡と、その他一部地域)のご相談を手がける。「他社に断られた物件」の相談を数多く受けてきた経験から、難しい不動産の手放し方を分かりやすく解説している。不動産業者向け業務SaaS「anken.」の開発者でもある。
公開日 最終更新
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