送電線の下や近くの土地はどう扱われる?線下の権利(地役権・区分地上権)と重要事項説明のポイント
送電線の下や近くの土地に設定される地役権・区分地上権の確認方法を解説。電気事業法に建築制限の規定はなく、実務で効くのは登記された線下の権利です。重要事項説明では電気の供給施設の整備状況が法定項目になります。
📑 目次
この記事で分かること
送電線の下や近くの土地に設定されている権利(地役権・区分地上権)の見つけ方、電気設備の離隔基準は誰に課された義務なのか、重要事項説明宅建業者が契約前に、物件や取引条件の重要な事項を宅地建物取引士が書面で説明すること。買主・借主が不利益を受けないための手続きです。で法定項目になるのは何かを解説します。
実家の土地の上を高圧線が通っている。あるいは、買おうとしている土地のすぐ横に鉄塔がある——そんなとき気になるのは「この土地、普通に家を建てられるのか」「売るときに不利にならないか」でしょう。
先に、よくある誤解をひとつ解いておきます。電気事業法という法律が、周辺の土地に建築制限をかけているわけではありません。電気事業法は電気を安全に供給するための法律で、条文に「建築物」という語は一度も出てきません(全文12万9千字を確認しました)。
では何が土地の使い方に影響するのか。実際に効いてくるのは次の3つです。
① 線下の権利(地役権のことも、区分地上権のこともあります)
送電線が土地の上空を通っている場合、電力会社と土地所有者の間で権利が設定されていることがあります。これは法律による規制ではなく、当事者間の権利設定です。
設定されている権利は1種類ではありません。古くから通っている送電線では地役権、比較的新しいものでは区分地上権で設定されているのが一般的です。どちらであるかによって、権利の中身も対価の考え方も変わります。
地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。
地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる。この場合においては、設定行為で、地上権の行使のためにその土地の使用に制限を加えることができる。
区分地上権は「上下の範囲を定めて」設定できる点が特徴で、送電線が通る空間だけを対象にできます。そして条文どおり、設定行為でその土地の使用に制限を加えることができます。「建物の高さを◯m以下にすること」「工作物を建てないこと」といった制限は、この設定内容として定められます。
買った土地に、その負担は引き継がれるのか
引き継がれます。根拠は次のとおりです。
地役権も区分地上権も物権です。そして不動産の物権は、登記があれば新しい所有者にも主張できます。
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
裏を返せば、登記されていれば、土地を買った人(第三者)に対しても効力があります。売主が「そんな話は聞いていない」と言っても、登記された権利は消えません。
だから、登記事項証明書の乙区を見てください
乙区を見れば、地役権も区分地上権も両方拾えます。どちらの形で設定されていても、権利の種類・範囲・制限の内容がそこに書かれています。
登記がない場合でも、電力会社との覚書だけが交わされているケースがあります。乙区に記載がなければ「無い」と決めつけず、売主にも確認してください。
② 電気設備技術基準の離隔(電線の側に課された基準)
高圧線と建物の距離については、経済産業省令に基準があります。ただし向きに注意してください。これは電線をどう設置するかの基準であって、土地の所有者に建築を禁じる規定ではありません。
使用電圧が十七万ボルト以上の特別高圧架空電線路は、市街地その他人家の密集する地域に施設してはならない。(略)
2 使用電圧が十七万ボルト以上の特別高圧架空電線と建造物との水平距離は、当該建造物からの火災による当該電線の損壊等によって一般送配電事業又は配電事業に係る電気の供給に著しい支障を及ぼすおそれがないよう、三メートル以上としなければならない。
主語は「電線路」「電線」です。義務を負っているのは電力会社であり、あとから建てる側を直接縛る条文ではありません。
とはいえ実務上は、この基準を満たせない計画は電力会社との協議で止まります。建てる前に電力会社へ照会するのが確実です。
③ 重要事項説明では何が法定項目か
ここも整理しておきます。電気事業法は、宅建業法第35条宅地建物取引業法で、契約の前に買主・借主へ重要事項を書面で説明する義務を定めた条文。重要事項説明書(重説)の根拠となる規定です。を受けた政令の列挙に含まれていません。つまり「電気事業法による制限」として説明する法定項目は存在しません。
一方で、電気の供給施設の整備状況は法定項目です。
飲用水、電気及びガスの供給並びに排水のための施設の整備の状況(これらの施設が整備されていない場合においては、その整備の見通し及びその整備についての特別の負担に関する事項)
| 項目 | 重要事項説明での扱い |
|---|---|
| 電気の供給施設の整備状況 | 法定項目(第35条第1項第4号) |
| 線下の権利(地役権・区分地上権)の有無と内容 | 法定項目ではないが、登記されていれば権利関係として説明が必要 |
| 送電線との離隔 | 法定項目ではない。ただし建築計画に影響するため調べて伝えるべき |
売却・購入で気をつけたいこと
送電線下の土地は、線下の権利(地役権または区分地上権)の対価として、電力会社から補償金が支払われていることがあります。買主に引き継がれる制限と、過去に受け取った補償は別の話なので、混同しないよう整理して伝えてください。
価格への影響は立地や制限の中身によって変わります。「送電線があるから必ず安い」ではなく、設定されている権利の内容を読んで、建てられるものが実際どう変わるのかを確かめるのが先です。
ご注意:本記事は一般的な解説です。個別の土地の取り扱いは、登記内容の確認と電力会社・自治体への照会、および専門家への相談をお願いします。
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この記事で参照した法令(e-Gov法令検索): 民法 / 電気設備に関する技術基準を定める省令 / 宅地建物取引業法
この記事を書いた人
小野海士宅地建物取引士株式会社オッティモ 代表取締役
不動産実務15年。東京都荒川区を拠点に、相続・空き家・訳あり物件の買取や売却のご相談を全国対応で手がける。「他社に断られた物件」の相談を数多く受けてきた経験から、難しい不動産の手放し方を分かりやすく解説している。不動産業者向け業務SaaS「anken.」の開発者でもある。
公開日 最終更新
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