新住宅市街地開発法とは?「5年建築義務」と「10年転売禁止」を解説|重説シリーズ⑫
新住宅市街地開発法の「5年建築義務」と「10年転売禁止」を徹底解説。宅地の譲受人に課される建築義務と転売制限の仕組み、重要事項説明のポイントを初心者にもわかりやすく図解します。
📑 目次
新住宅市街地開発法とは?「5年建築義務」と「10年転売禁止」を解説|重説シリーズ⑫
❓ 「新住宅市街地開発事業」って、普通のニュータウン開発と何が違うの?
❓ 土地を買ったのに、5年以内に家を建てないといけないって本当?
❓ 買った土地を10年間も売れないって、どういうこと?
この法律は、高度経済成長期など、大都市の人口急増に対応するために作られた法律です。目的は「住宅に困っている人へ、良質な宅地を大規模に供給すること」。そのため、土地の転売(投機)を防ぐための強力なルール、すなわち「5年以内の建築義務」と「10年間の転売制限」が定められているのが最大の特徴です。
🏘️ 法律の目的と開発の仕組み
新住宅市街地開発法は、1963年(昭和38年)に制定されました。まさに、大都市圏へ人々が集中し、深刻な住宅不足が起きていた時代です。
この法律の目的は、住宅に困窮する国民のために、住みやすい環境の住宅地(ニュータウン)を**大規模に(一度にたくさん)供給する**ことです。
「買収方式」と「換地方式」の違い
この法律の事業は、第8回で解説した「土地区画整理事業」とは根本的に進め方が異なります。
- 土地区画整理(換地方式): 土地の権利は元の所有者が持ち続け、整備後に「交換(換地)」する。
- 新住宅市街地開発(買収方式): 事業者(国や自治体など)がエリア内の土地を**すべて買収**し、一度まっさらな状態にしてから道路や公園を整備し、新しい区画として**「分譲(処分)」**する。
(図解:新住宅市街地開発事業のフロー(買収方式))
📑 重説の最重要ポイント:購入者にかかる2大制限
この法律の最大の特徴は、STEP3で土地を「分譲(処分)」された購入者(譲受人)に対して、投機(転売目的の購入)を防ぐための厳しい義務と制限が課される点です。
重要事項説明では、この2つの制限(法第31条、法第32条)が説明されます。
(図解:新住宅市街地開発法における購入者の2大制限)
1. 5年以内の「建築義務」(法第31条)
事業者から造成宅地を譲り受けた人(買主)は、その土地が「住宅用」と計画されている場合、**「譲受けの日(買った日)の翌日から起算して5年以内」**に、計画で定められた用途・規模の建築物(主に住宅)を建築しなければなりません。
⚠️ 土地だけ持っておく(塩漬け)はNG
この法律の目的は「住宅供給」です。土地を買った人が建築せず、投機目的で放置(塩漬け)することを防ぐために、この「建築義務」が課されています。
2. 10年間の「譲渡(転売)制限」(法第32条)
さらに、投機的な転売を防止するため、二重のロックがかかります。
造成工事が完了した旨の公告があった日の翌日から起算して**10年間**は、その土地や、その土地に建てた建築物について、**都道府県知事の「承認」**がなければ、以下の行為ができません。
- 所有権の移転(=**売買、贈与**)
- 地上権、賃借権などの設定・移転(=**土地を貸す**こと)
つまり、事業完了から10年間は、原則として**自由に売ったり貸したりできない(転売禁止)**ということです。
✅ 重要事項説明での扱いとチェックポイント
取引する土地が「新住宅市街地開発事業」によって造成された土地である場合、宅地建物取引業者はその内容を重要事項説明(重説)で買主に説明する義務があります。
1. 重説で説明される項目
重説では、主に以下の点が説明されます。
- 法律名: 新住宅市街地開発法
- 建築義務(法第31条):
- 造成宅地を譲り受けた者は、**5年以内**に計画に沿った建築物を**建築する義務**があること。
- 譲渡制限(法第32条1項):
- 事業完了の公告から**10年間**、土地や建物の権利を移転(売買・賃貸など)するには**知事の承認**が必要であること。
2. 買主・仲介業者のチェックポイント
新人営業マンや買主様は、特に以下の点に注意して確認しましょう。
新住宅市街地開発法 取引チェックポイント
- ①「5年の建築義務」の起算日はいつか?
新築物件であれば問題ありませんが、もし「土地」として売買する場合、前の所有者が譲り受けた日から5年間のカウントがスタートしています。残りの期間がどれくらいか確認が必要です。 - ②「10年の譲渡制限」の期間内か?
中古物件の仲介や土地の転売の場合、事業完了の公告日から10年を経過しているかを確認します。もし10年以内の場合は、売主が知事の承認を得ているか(または承認が得られる見込みか)が取引の大前提となります。 - ③ そもそも「この法律」の対象物件か?
全ての「ニュータウン」がこの法律で造られたわけではありません。「〇〇ニュータウン」という名前でも、単なる開発許可や土地区画整理事業で造られた場所も多いです。重説の調査段階で、この法律による事業地かを明確に区別することが重要です。
❓ FAQ(よくある質問と回答)
Q1: なぜこんなに厳しい「建築義務」や「転売禁止」があるのですか?
A1: この法律が作られた目的が、投機(金儲け)のためではなく、**「本当に住宅に困っている人に、適正な価格で良質な住宅地を供給する」**ためだからです。土地が投機目的で買い占められ、価格が高騰したり、空き地のまま放置されたりするのを防ぐために、強力な制限が設けられています。
Q2: もし10年以内に、急な転勤で家を売らなければならなくなったら?
A2: その場合は、都道府県知事に「承認」の申請を行います。法律(法第32条1項)では、投機目的でないことが明らかな場合など、一定の基準を満たせば承認が得られる道が残されています。やむを得ない転勤や、住宅ローンの破綻などは、承認の対象となる可能性があります。
Q3: 5年以内に家を建てなかったら、どうなりますか?
A3: 法律の義務に違反したことになります。事業施行者(国や自治体など)は、その土地の権利を**「買い戻す」**ことができるとされています。実際には行政指導が入ることが多いですが、最悪の場合、土地を取り上げられるリスクがある重い義務です。
Q4: 10年の譲渡制限期間中に、知事の承認なしに売買契約をしたら?
A4: その売買契約は**「無効」**です。買主は所有権を取得できません。不動産会社(宅地建物取引業者)が仲介してこのような取引を行った場合、重大な業法違反(重要事項説明義務違反)に問われます。
Q5: 土地区画整理法(第8回)との一番の違いは何ですか?
A5: 権利の扱いです。
・土地区画整理法 → 権利は元のまま(土地の交換)。
・新住宅市街地開発法 → 元の権利は一度「買収」で消滅し、事業者が新たに「分譲(販売)」します。
そのため、新住宅市街地開発法では「購入者」に対して建築義務や転売制限といった、より強い規制をかけることができるのです。
まとめ
「新住宅市街地開発法」は、大都市圏の住宅難を解消するために、事業者が土地を「買収」してニュータウンを造成する法律です。
🔑 新住宅市街地開発法における重要ポイント
- 土地の「換地(交換)」ではなく、事業者による**「買収・分譲」**方式である。
- 土地の購入者(譲受人)は、**5年以内に計画通りの建物を建てる義務**がある(法第31条)。
- 事業完了から**10年間は、知事の承認なしに転売や賃貸ができない**(法第32条)。
売買・仲介に携わる宅地建物取引業者は、その物件がこの法律による造成地ではないか、もしそうであれば、建築義務や譲渡制限の期間(5年/10年)がまだ残っていないかを正確に調査し、買主に説明する重い責任があります。
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❓ よくある質問(FAQ)
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