古い町並みや緑の多い地域の家、売却前に知る区域の規制
歴史的風土保存区域では建築や造成、伐採などに届出が必要です。より規制の強い歴史的風土特別保存地区・特別緑地保全地区では許可が必要となるため、売却や建て替えの前に自治体の地図で対象範囲を確認しましょう。
📑 目次
ミナお客様から「相続した古い家を建て替えたいが、緑が多い地域なので普通に進めてよいですか」とご相談がありました。
タケさん結論から言うと、工事を決める前に区域を見た方がいい。特別緑地保全地区、つまり緑地を守るために建築などを制限する地区なら、許可が要るからな。
ミナ特別緑地保全地区とはどういう意味ですか。古い町並みの地域にも同じような決まりがありますか。
リク手順としては、所在地を確認してから、市町村の資料で区域の範囲を見る形でよいですか。
古い家を壊す前に、土地の区域を先に見ます
古い町並みや緑の多い地域では、家の新築・改築・増築に届出や許可が必要な区域があります。届出は、工事の前に行政へ知らせる手続です。許可は、工事の前に行政の認めを受ける手続です。売却を先に考える場合でも、買う人が建て替えられるかを考えるため、この確認を飛ばせません。
相続した古い家の建て替え案を机に置き、所在地を地図に重ねる場面を考えてください。京都市は、歴史的風土保存区域を14地区、歴史的風土特別保存地区を24地区として公表しています。歴史的風土保存区域は、古都の歴史と自然が一体となった土地を守る区域です。歴史的風土特別保存地区は、その中でも特に大切な場所として定める地区です。
緑地保全地域は、緑地を守る地域です。特別緑地保全地区は、良好な自然環境となる緑地を、建築などの制限で守る地区です。緑化地域は、敷地内の緑を増やすため、建物の緑化率、つまり敷地のうち緑を設ける割合の最低限度を定める地域です。名前が似ていても、建て替え前に見る内容は同じではありません。
売れないと言われた物件でも、相談はできます。再建築不可・残置物あり・長年の放置もそのままでどうぞ。相談は無料です。
無料で相談してみる区域ごとに見る建て替え前の決まり
| 地域の種類 | 新築・改築・増築 | 木竹の伐採 | 売る前に見る点 |
|---|---|---|---|
| 歴史的風土保存区域 | 届出 | 届出 | 届出の対象行為 |
| 歴史的風土特別保存地区 | 許可 | 許可 | 許可の対象行為 |
| 特別緑地保全地区 | 許可 | 許可 | 許可の対象行為 |
| 緑化地域 | 緑化率の規制 | ― | 対象規模と緑化率 |
古都の区域は、届出と許可を分けて考えます
古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法は、古都の歴史的風土を後代へ受け継ぐための法律です。国土交通省は、この法律に基づく古都として、京都市、奈良市、鎌倉市、天理市、橿原市、桜井市、斑鳩町、明日香村、逗子市、大津市を示しています。
歴史的風土保存区域では、建築物などの新築・改築・増築をする前に届出が必要です。宅地造成、つまり宅地にするため土地の形を変える工事も届出の対象です。木竹の伐採、土石類の採取、水面の埋立てや干拓も対象に含まれます。保存のために必要なときは、府県知事または政令市長が助言や勧告を行えます。
一方、歴史的風土特別保存地区では、新築・改築・増築に許可が必要です。土地の形を変える工事、木竹の伐採、土石類の採取も許可の対象です。建物などの色を変えることや、屋外広告物、つまり屋外に出す看板などの表示・掲出も対象に含まれます。許可に反した場合は、現状回復などを命じられることがあります。
売却を急ぐあまり、建て替えられる前提で話を進めるのは危険です。買う人にとっては、建て替えの前に届出か許可かを見通せることが重要です。歴史的風土特別保存地区の許可は、重要事項説明宅建業者が契約前に、物件や取引条件の重要な事項を宅地建物取引士が書面で説明すること。買主・借主が不利益を受けないための手続きです。、つまり法令に基づく制限を伝える説明に含まれます。宅地建物取引業法施行令第3条第1項第3号は、古都保存法第9条第1項の許可を法令に基づく制限として挙げています。
リク届出の区域と許可の区域では、工事の前に必要な手続が違うのですね。売却前は、どこまで確認しておくとよいですか。
タケさんまず所在地が区域に入るかだな。京都市内なら、景観情報共有システムか縦覧図、つまり公開された図面で詳しい範囲と境界線を見られる。そこは見てみないと分からない。
ミナ古都の地域だけを見ればよいわけではなく、緑を守る地区も重なることがあるのですね。
タケさんそう。特別緑地保全地区なら、建て替えも土地を変える工事も許可が必要だ。緑化地域なら、対象になる建物で緑化率を見る。
緑を守る地区では、建物だけでなく土地の扱いも見ます
都市緑地法は、都市の緑地を守り、緑化を進めるための法律です。緑地保全地域では、新築・改築・増築の前に届出が必要です。宅地造成、土地開墾、土石採取など、土地の形を変える行為も届出の対象です。木竹の伐採や水面の埋立て・干拓も含まれます。
特別緑地保全地区では、新築・改築・増築に都道府県知事などの許可が必要です。土地の形を変える工事や木竹の伐採、水面の埋立て・干拓にも許可が必要です。この地区は、自然環境となる緑地のほか、寺院や遺跡などと一体となる緑地、景観が優れた緑地などを守るために定められます。
緑化地域では、原則として敷地面積1,000平方メートル以上の建築物の新築または増築が緑化率規制の対象です。市町村は条例により、対象となる敷地面積を300平方メートルまで引き下げられます。増築では、従前の床面積の2割以上の増築が対象です。都市計画で定める緑化率の最低限度は、敷地面積の25%を超えない範囲です。
都市緑地法による制限も、重要事項説明に含まれます。宅地建物取引業法施行令第3条第1項第4号は、都市緑地法第8条第1項、第14条第1項、第35条に関する制限を列挙しています。売る前の段階で、土地にどの制限が重なるかを整理しておくと、建て替えの話を曖昧なまま進めずに済みます。
売却または建て替えを決める前の進め方
よくある失敗は、建て替え案を先に固めることです
よくある失敗は、古い家を解体して新しい家を建てる案を先に固め、その後で区域の制限を知ることです。地域名に「古都」や「緑地」が入っていても、土地が実際に区域内かどうかは、所在地と境界線を見なければ分かりません。
この失敗が起きるのは、古い家の傷みや相続後の片付けに目が向き、土地にかかる決まりを後回しにしやすいためです。しかし、歴史的風土特別保存地区と特別緑地保全地区では、建て替えに許可が必要です。緑化地域では、対象規模の建築で緑化率の最低限度を満たす必要があります。
対象の市町村と区域は、法律、政令、告示で定められます。古都の対象市町村は、e-Gov法令検索と国土交通省の資料で示された範囲を見ます。個別の土地の境界線は、市町村が公開する資料で見ることが大切です。京都市は、景観情報共有システムまたは縦覧図での確認を案内しています。
✅ 売る前・建て替える前に手元で見る項目
- 土地の所在地をすぐ伝えられるか
- 歴史的風土保存区域内かを見たか
- 歴史的風土特別保存地区内かを見たか
- 特別緑地保全地区内かを見たか
- 緑化地域内かを見たか
- 新築・改築・増築の予定があるか
- 木竹の伐採や土地の形を変える予定があるか
区域の名前ではなく、土地の位置から判断します
まとめると、古い町並みや緑の多い地域の家は、売却や建て替えを決める前に、土地がどの区域に入るかを見ることが出発点です。歴史的風土保存区域では届出、歴史的風土特別保存地区と特別緑地保全地区では許可が必要な行為があります。緑化地域では、対象となる建築で緑化率を見ます。
古都に関する制限も、都市の緑に関する制限も、重要事項説明に含まれる法令に基づく制限です。所在地と区域の境界線を先に見れば、売却時にも建て替え時にも、土地の条件を整理したうえで話を進められます。ご不明な点は、無料相談で個別にお答えしています。お気軽にご相談ください。
出典: e-Gov法令検索 / 国土交通省 / 自治体(city.kyoto.lg.jp)
この記事で参照した法令(e-Gov法令検索): 宅地建物取引業法施行令 / 古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法 / 都市緑地法
この記事を書いた人
小野海士宅地建物取引士株式会社オッティモ 代表取締役
不動産実務15年。東京都荒川区を拠点に、相続・空き家・訳あり物件の買取(日本全国)や売却(関東・大阪・名古屋・福岡と、その他一部地域)のご相談を手がける。「他社に断られた物件」の相談を数多く受けてきた経験から、難しい不動産の手放し方を分かりやすく解説している。不動産業者向け業務SaaS「anken.」の開発者でもある。
公開日 最終更新
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